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30億塩基あるヒトゲノムDNAの一塩基だけを置換する

 ゲノム編集技術はヒトiPS細胞の遺伝情報の改変を可能にし、疾患モデルの確立や細胞移植治療などへの応用が期待されています。しかし、人工的な配列を残さずに30億塩基からなるヒトゲノムDNAの一塩基だけを置換するのは非常に困難でした。多くの疾患は一塩基置換によって引き起こされるため、この一塩基置換が自在になれば広範な応用が期待できます。

 私達は、CRISPR/Cas9やTALENとデジタルPCR技術を組み合わせて、一塩基置換だけを持つiPS細胞を単離する技術を開発しました(図1, Miyaoka Nature Methods 2014)。

 この手法を用いれば、ゲノムの望んだ箇所に一塩基置換を導入することができます(図2)。

図1

ゲノム編集結果をデジタルPCRで検出する

 私達はゲノム編集結果を高感度かつ高精度に検出するために、デジタルPCR技術を使っています。詳細については、webinar (英語)をご覧ください。

 (TheScientist Webinar Series, Oct 14th, 2015)

図2

図3

野生型細胞

変異細胞

ACTININ/

疾患を培養皿上で再現し、その発症機序を探る

 iPS細胞のゲノムを編集すれば、あらゆる細胞種での遺伝性疾患の発症機序を培養皿上で解析できます。例えば心筋症の原因点変異を導入したiPS細胞を心筋細胞へと分化させると、実際に患者で認められるサルコメア(心筋細胞の収縮機能単位である縞状の構造)の形成異常が起きます(図3)。また、心筋症と神経変性疾患に共通する、RNAとタンパク質が凝集する異常による疾患の発症機序も明らかにしました

治療に使える正確なゲノム編集条件を探索する

 遺伝性疾患を持つ患者さん由来のiPS細胞は、その原因となる変異を保持していますが、この変異を修正することができれば、移植治療に使える可能性があります。そのためには、ゲノムに不必要な傷をつけない正確なゲノム編集が必要です。私達は、遺伝性肝疾患であるウィルソン病の原因となる変異などを、iPS細胞において様々なゲノム編集条件によって修正し、高感度なデジタルPCRなどを駆使してその正確性を評価していきます。

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